ニも食べず。寿江子はきのうアパートへ荷物をもって来て、さっき見に行って来たところ。東と南が開いていて落付きます六畳で19[#「19」は縦中横]円。夕飯をすましたら銀座の三越へカーテンを買ってやりにゆく。目下小説についてコネ中。可笑しいことにはこの三日ばかり前から一匹の猫がどこからか家へ来るようになりました。おとなしい灰色と白。夜は皆猫を大して好かないから閉めます。すると、朝私が茶の間に坐ると出て来て決してよそにゆかない。この猫は随分間抜けです。猫なんて好かない人にこんなになつくものでないのに、可笑しい奴! 今これを書いている足のところに丸まっています。そしてニャーゴォなんかと鳴けず、変な声でギューギュー鳴いている。
M子は近所のアパートへ四、半の部屋をかりて暮すことになりました。四十円の月給とりです。自分でとる金で自分の生活をやって見ることが必要だから。
十六日の午後 曇。よそでピアノの音。仕事をこねている。大体まとまる。そして、気持がのって来る。
二十日の夕方 六時。
今日は日曜日で、うちはワルプルギスの夜ですよ。寿江、M子、その他の連中が集って来ている。いよいよ仕事にとりか
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