ュ降参ですから。ただしっかりものの女なんて※[#感嘆符二つ、1−8−75] 松山さんの絵が上達するのをたのしみにして待って居りましょう。
島田と野原の方のこと、二三日のうちにとりはからいます。本当にいい折でしょう。島田にしろ達ちゃんが召集をうければやはり人手を以前よりおやといにならなければならないのだし。
野原と島田とは同額にします。50[#「50」は縦中横]ぐらい減らしたって同じこと故。まあ私たちとして一生に一度のことでしょうからね。それから、これは女房じみたお願いですが、どうか島田へ手紙をおかき下さい。今度のことは私たちが度々出来ないことだから今しておくのだということをはっきり御納得ゆかせておいて下さい。私はいろいろな気持からこの間うち島田へ出来るだけ骨を折っている。作家は雑作なく大した金をとるそうな、というお考えが何となく出来ていて、実はこの間行ったときも感じて苦しかった。私は説明したり、ありがたがって貰ったりはしたくないから笑っているだけですが。どうかお願。私のこの心持もあなたには勿論おわかりなのだから。よろしくお願いいたします。こういう形で出て来ると、同じ〔後欠〕
十一月一日朝 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十一月一日 第三十五信。
この間お目にかかったときから何か心にのこっているものがあっていろいろ考え、あなたのお体のことについてですが、床に入る前この手紙を書く気になりました。
この間のときも、あなたはどっちかというと私の心持を安めよう、不安を与えまい、大局的に悠々《ゆうゆう》としてするべき勉強をしているようにと心にかけて御自分の健康のこともお話しでした。私もそのお気持はよくわかるしいろいろだが、不図考えて、私はいつもあなたの体の悪いときを過ぎてからだけそのことをきいているということについて非常にびっくりしました。例えば夏に腸出血をしたということを初めておききしたのは十月十五日頃でした。その前から永らく便に膿《のう》が混っていたことを伺ったのは先日がはじめてであったと思います。そしてそういう病状は既に年のはじまり頃からあったのでしょう。
細かい変化、熱の上下、そういうことは勿論大局的に眺め見とおしてゆかなければならないが、そういう、何か本質的な変りについて、私がそのときどきに知らなかったということは、決して今日の私をも安心せしめません。あなたとしてそれらを持って動じぬことで自然な恢復力を蓄積していらっしゃることは当然のことであるけれども、私が其を刻々に知らされないことは、考えて見れば、あまり特別です。あなたからしか謂わばあなたの体のリアリティーは知ることが出来ない。私が根もとの安心というか持久的なものはたっぷりもっているということがよくわかっていただけているなら、私は常に具体的にあなたの体の事情について知っていて、私としてするべき様々のことをしたい。この間もお話ししたように、互の間にある安らかさというものの能動的な具体性はあるのですもの。例えどんな小さいことでも。どんな一寸したことでも。私は古風なロマン主義者でも巫女《みこ》でもないから、最も大切なものをアブラハムの祭壇にただのせて主観を満足させてはいられない。
どうかこれから出血でもあったり、何か変ったことがあったらきっと電報を下さい。きっと。私が右往左往的心痛をするだろうという風な御心配は本当に無用です。私は逆から云えばあなたに安心されている証左としてもそのようにして頂く権利があると思うの。よほど前、咲枝に下すったお手紙で、ユリの体についても何についても最も悪い場合のことでも事実を知らすようにと仰云っていたでしょう? あの心持。分って下さるでしょう? 劬《いた》わられ、知らされない。それは有難く、うれしい。でもくちおしいというようなことがないとどうして云えましょう。私はこれまで割合多岐な現実を見て、それを正当に理解し耐え、処する道を見出そうとする努力には次第につよめられて来ている。私たちの生活の貴重な収穫として。ですから、私がはっとばかりにとりのぼせてはしまわないことが確かなら、どうぞもっとそのときそのときあることを教えて下さい。これはあなたとして何もさしさわりはおありにならないことです。そうして下すったからと云って、あなたの何ものもよわりはしない。大変面倒くさいことでしょうか? 或はそういう様々の手続きが却ってあなたの体にさわる風な事情でしょうか。もしそうならば、ですがさもなければどうかこの希望をかなえる約束をして下さい。却って私は安堵することが出来るだろうと思います。私はあんまり我ままな女房ではないでしょう? だからその承認として、こういう指きりをして下さい。もしお願いがわがままだったらそれでもかまわない、やっぱり私は私の心
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