でしょうね。可笑しいこと。
きのう鶴さんのところでお手紙拝見しました。稲ちゃんが、「あの着物を私達が入れたと思ってお礼を云われて、わるくってしようがない!」とくりかえし笑いながら云っていた。縫うことと小包にすることを私が留守なのでたのんだのでした。「でも、好意ということでは同じだからいいさ」と私も笑ったの。本(蘭学事始)は、たしかに二人からの御誕生の祝です。鶴さんは大変体が参って居ります。そしてこの人は科学的には治療出来ないの、私は心配して居ます。彼は生きなければなりません。その重要さがはたしてどの位わかっているかしら、よくそう思う。
この間島田へ上林からお送りしたのは松葉の茶です。今度は少し沢山、野原の方と両方へお送りいたしました。いつぞやお話のあった毛布ね。あれはことしのお歳暮にさし上げましょう。私も少しは稿料も入るし。「阿Q正伝」の作者魯迅が没しました。写真の顔は芸術家らしくなかなか立派なところがあります。支那のゴーリキイといわれた由。この頃、パアル・バックというアメリカ人の女作家(支那生れ)のひとの「母」「大地」など支那を描いた作品をよみました。芸術の現実によって中国のしん
前へ
次へ
全106ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング