時に眠ったとお思いになりますか? 六時半よ。そしてけさ、六時半。納豆、野菜など、なかなか美味です。きょうテーブルをこしらえて貰います。

 十月十一日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 長野県上林温泉より(せきや旅館前の桜花の絵はがき)〕

 十月十一日、日曜日、晴。
 十月三日づけのお手紙を昨日いただきました。私の生活のうまいやりかたについて考えて下さり、本当にありがとう。この頃私は痛切に考えていたことでしたから。ゆっくり手紙を書きますが、とりあえず。林町では国男が盲腸でケイオウに入院し、一時間半かかる手術をしましたそうです。イマそのハガキを見ました。そのゴタゴタもあって、咲枝はあなたにさし上げる夜具をまちがえて送ってしまいましたが、あとでとりかえますから、何卒《なにとぞ》あしからず。
 シャツ、薄いもの上下、まだ届きませんかしら。冬のはまだ早いと思い、毛の薄いのを入れましたが。
 これが私のいるせきやさんの一家です。左手の障子がその家。もっとも十年ほど前の様子ですが。この桜並木はよく、皆の顔の向きに山々の眺望があります。お大切に。
〔欄外に〕本のことはよく分りました。こんどは忘れっこなし。

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