は、はっきりそのことを感じてもいるのです。私の生活の響が応えられていることを。
 さあ、本当にこうしていないで髪を洗わなければ。さっきの手紙を封をしてまだテーブルの上におき、私はもう次のたよりの冒頭をかいているのです。
 九月七日
 一週間とんでしまいました。あなたは二十九日には手紙を書いて下さいませんでしたか? 日曜日(六日)には大変待っていたのだが。――私は今病気なの、珍しく。変に黒い突出たような眼玉をして。三十一日の朝(この前の手紙をあげた翌日)起きるのが苦しかった。無理をして約束の築地の稽古場へゆき一時間半ほど熱心に話をしてくたびれてかえったら悪寒がして熱が四十度ばかり出ました。夜中だったがお医者を呼んだら喉が少し赤いというのでルゴールでやいてね、冷やしたり、おなかをあっためたりそんなことをして、どう原因があるということもはっきりせず今日やっと平熱になりました。
 眠って、眠って、眠って、まるでそういう病気のようでした。きょうは眠くないの。皆心配してくれ、稲ちゃんは私が仕事をしすぎているから断然当分呑気に休まなければいけないという主張です。本当にそうするかもしれません。これがな
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