いうことに触れて書くとき私はその答えが分らなくて書くのではないのですよ、答えはわかって居て、心に響となって鳴っていて、何とも黙しかねて、字にまで溢れるという工合なの。あなたが、そういうことにもふれて、きょうのような手紙を下さるのも私には大変にうれしい。私の生活について書いて下さることは勿論必要なものとして摂取されずにいるわけはないのですものね。
私は愚劣なものの中からさえ役に立つものがあれば何か役に立つものを見出そうとする位、よくばりなのだから。まして。まして。恐らくあなたは御自分の字、字そのものよ、までが私にどの位必要なものであるかきっと御存知ないでしょう。
恐ろしい、動きのとれない現実はないと仰云るのは本当です。私だって、それは知るようになったし、云わば一人の人間が自分だけ動きがとれない心持でいるのに、客観的な現実はどしどし推移してゆくところに、現実――生活の力強い波動があるとさえ云えるのだから。只どうぞ、「失うものは借金ばかり」とおえばりにならないで下さい(ホホー。)
私は今特にどの点について「事情を改善することにつかれた」心持を書いたか覚えて居りませんが、経済的なことでは
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