予定があり、私の校正も一通り終ったら或は安積へゆくかもしれません。只景色のいいところにいるだけなら二三日でよいが、安積は久しぶりでいろいろ面白いかとも思うので。
 きょうは暑いが乾いている。机の上にコスモスの花があって非常に初秋めいた美しさです。スエ子の注射のための看護婦のひと(私も慶応で世話になり、父の最後も世話してくれたひと)が、私がよく仕事をするからと御褒美によく花をいけかえてくれるのです。あなたのところの蘭はまだ活々として居りましょうか。白藤の花は三房あります。ではまた。

 付録(一枚)
 きょうもお話の間にいろいろ私の生活について心配して頂いていることをありがたく存じました。でも、普通な意味で心配していただくには及ばないのです。その点私達は大層幸福者であります。私はやっぱりどこまでも私ですから。あなたは百合はお嬢さんだが、云々と云って安心していらしったその安心をずっともっていて下さってちっとも間違いでないし見当ちがいでもないのです。私は自分がそういう点安心しているのにあなたが心にかけていらっしゃるのかと思うと、逆に何だかこうして説明しなければならないような気になります。
 
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