の編輯の仕事に入りたい希望でいることは、この前の手紙で申しあげましたね。今月の二十日頃採否がきまります。いずれにせよ、この家には住まないことになりました。KUが私がいないではSUと住むことを我慢しきれないというの。SUの方でも。――ケンカ別れをしてしまうより別々に暮そうということになったのです。二人ながら生活においては未熟練で、感情的で、互に「他人よりわるい」場合が頻出するのですね。私は太郎の遊んでいる姿を眺め、この可愛い小僧の精神の中に、どれ丈この生温い、受身な、姑息な生活気分を打開する力がこもっているかと思います。そしてどうかこの小僧が成長する時代が活溌であって、おのずからいきいきとした雰囲気に呼吸して育つようであったらと希望します。私たちの家の三代の間の歴史は実に興味があります。この面白さは文字でしか描写できぬものです。
 私の家はそろそろさがして貰うことにしました。どこに住んでよいかよく分らないけれど早稲田南町辺はどうかしらなど考えて居ります。戸塚へも近いし。市外はおやめです。夜などの出入りに淋しくて困るから。
 この手紙はいろいろ盛り合わせになりました。
 お体の様子は又くわ
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