は『文学案内』に。
 私はゴーリキイをこのように愛し、食べ、学び、そして、アメリカ流に云えば through になってしまおうとしています。トルストイとも比べ、この二人からは何という滋養の吸いとれることでしょう。トルストイが若かったゴーリキイのことを、「頭はわからない。ひどく混雑している、が人間として非常に知慧がある、フム」と云ったことは興味あります。二人はなかなか噛みでがあります。
 ゆうべは良さん、ター坊の親たち、重治さん、栄さん夫婦などと、どじょうのおつゆをたべて大変面白くいろいろ――アンデルセンの自伝のことその他を話しました。
 きょうは、手紙をいただいて、笑い出しつつ握って振ったゲンコをこのような形にかえて御目にかけます。

 七月二十三日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(有島生馬筆「ある種の肖像画」の絵はがき)〕

 七月二十三日。きょうはお目にかかるつもりで出かけたところが、生憎加藤氏がお休みをおとりになっているので都合がつかず残念をいたしました。なかなか暑気が厳しいがいかがですか。盗汗《ねあせ》は出ませんか。熱は? きょう中川によって昨今のまま一ヵ月お弁当をつづけ
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