ないように、宙では内みが何になるか、やはり手ばなしには云えないことです。三日は午後から外が明るい中にかえろうといいつつ、いね公がグーグーひるねをしてしまっておくれて八時すぎに汽車にのり、かえったのは十一時頃。私は自分の二階に横になって吻《ほ》っとしたような心持ちをつよく感じ、自分がこのわれらの家をどんなに愛しているかということをはっきり自覚しました。
あなたは勿論一度に手紙を二通おかけになることは御存知でしょうね。
きょうは本当に寒い。栄さんが、かけていらっしゃる布団と同じ布の坐布団を縫ってくれたのできょうはそれの敷き初めをしました。これを書いているのは五日の午後四時前。障子を新しく張り代えたので、室内は明るくテーブルの上には赤い梅もどきの一枝がさしてある。火鉢のやかんからは湯気を立て。――かぜがはやって居りますが大丈夫ですか? しもやけなどは出来ませんか。栄さんは早々と耳朶《みみたぶ》をかゆがって居ります。七日に、本は『世界文学総論』、カーライルの『クロムウェル伝』、『日本書紀』上・中、ポアンカレの『科学者と詩人』、『国富論』上を入れます。私によくわからないので伺いますが、例えば
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