なことがなくてすみます。箱根山の関係で、これまでのでは調子がわるく、うまくきこえるのは却って遠いそっちの方なのでした。いつか二人で聞いていて、私がそれを発見し大笑いをいたしました。
近々に太郎が、生後まだ六十日ばかりのヒヨヒヨながら伯父様、即ちあなたに誕生最初の敬意を表して何か本をさし上げるそうです。湯ざめがして来たから一旦これでおやすみ。本当に床に入るのです。
次の日の午後四時頃。(五日)雪どけの雨だれの音がしとしととしている。下の、北向きの部屋の濡椽には雨だれのしぶきがかかって下駄がぬれてしまった。
きょうは久しぶりで髪を洗い、さっぱりしたと同時にクタクタになってしまいました。昼湯というのへ実に久しぶりにはいりました。私はどういう性か、子供の時分から髪を洗うととてもくたびれて、元は病気のようになったものです。さっき髪を洗って長火鉢のところでお茶をのんでいたら、トルストイの結婚の幸福の中に、女主人公である娘が、領地のテラスで湯上りで、ぬれている髪に白いきれをかぶってくつろいでお茶をのんでいるところへ、後良人となる男の人がゆくところが描かれていたのを思い出しました。
ああいうと
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