紅いにしろともかく梅が入ったかしら。――どうも漠然たるものですね。
運動の時間、あなたはどんなことをしていらっしゃいますか。心臓の抵抗力を弱めないよう、例えば朝体操をする時など柱でも壁でも爪先で体を突っぱってうんと押して力を出す事もよいらしゅうございます。私の心臓がひどくなったのも運動不足による衰弱です。どうかお気をつけになって下さい。それからお風呂の時桶や湯槽《ゆぶね》の縁をよく注意して、眼へバイキンなど入れぬよう、呉々お願いいたします。私の心配と云うのも謂わばそのようなことが主なのですから。――
今夜本当は帝劇へベルクナーという女優が主演している女の心という映画を見に行こうかと思っていたのでしたが、家の中をコトコト動いていたので駄目。新交響楽団のベートウベンをずっときいているのですが、今度はパスをくれそうです。そうしたらうれしい。うちにピアノがほしいけれどもピアノがあったらよしあしだろうからそれよりレコードをきけるようにしたいと思っています。国府津へ国男が父親になった記念に大変いいラジオをすえつけて上げたので親父さんはもう、東京だと思って聞いていたらそれは上海であったというよう
前へ
次へ
全42ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング