館か何かの人が裃《かみしも》を着て豆をまきに護国寺へ出かけたのだそうです。私はおふろの中で赤毛碧眼の若いひとが裃をつけてどんな発音でフクワうちと叫ぶであろうか。もしかしたらフキュワーウチというであろうと可笑しく、そのラジオならきいてもよいと思いました。
二月の十三日は私の誕生日と母の命日とが重なるので何か特別よいことはないかしらと今からたのしみにして居ります。あなたはそれを覚えておいでになるかしら、忘れていらっしゃるかしらなど、中川でおべん当を注文する折考えました。
ところで、二日にお目にかかって、私は本当に安心いたしました。三十一日に電報をいただき、一日都合よく行かなかった間はいろいろ心配――単純にそうでもないが、心労いたしました。二日には、あなたがそれまで二度お目にかかっていた時よりずっと馴れて、顔つきにも体つきにもあなたらしい流動性が出ていて、大変うれしく、本当にうれしかった。晴れやかな心持でかえりにいねちゃんのところへよったら、やっぱりよかったねとよろこんで、鶴さん[自注2]が何とかいったら、いい機嫌なのによしなさいよと云うから、私は平気さ、何と云おうと鶴さんのいうことなら
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