、多分一月頃出版の運びになるだろうと思って居ります。本年一月の『文芸』にかいた「小祝の一家」という小説は三一書房という本屋から出たいろいろな人十七人の『われらの成果』という小説集の中に集録されました。その小説集には島木健作「癩」、平田小六という「囚われた大地」という長篇小説をかいた元隆章閣の人などもはいっているし、婦人作家では私のほかにいね子[自注16]、松田さん[自注17]なども居ります。藤島まきという作家も出ました。文学におけるリアリズムの問題が、はじめ妙な傾向をもってトリビアリズムと混同して出されたし「ナルプ」は二月解散になったし、今もってその点では問題がのこされている有様です。私はそういうことについても、其だけ切りはなして云々せず、例えば窪川鶴次郎の「風雲」という小説の批評や、横光利一の大評判になった「紋章」などにふれつつ作家としての仕事ぶり生活ぶりにふれた感想そのものの書きかた、現実の生活的な問題としての文学理論上の問題の捉え方そのもので、正常なリアリズムの発展的な方法を示してゆくよう努力しているし、そのために好評でもあると思われます。小説について一九三二年の春ごろよりは又一
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