ゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等な権利にたって徐々に改善されていくでしょう。しかし、現在の日本の全人民生活を危機に陥れているインフレーションは、これらの名目上の婦人解放の実現を、非常に困難にしています。一日一日と騰貴する物価に、決して追いつくことのない待遇改善の実情は、妻であり母である女性の辛苦を言語に絶した状態においています。若い勤労婦人にとって、現在のような経済上の危機は、彼女たちのモラルの危機としてあらわれています。更に、まだ全然社会化されていない日本家庭の家事の負担は、家庭の主婦を過労にさせているばかりか、すべての勤労婦人にとって二重の疲労をもたらしているのです。日本婦人大衆の生活の実状は、このようなものです。戦争による未亡人の生活確立に関して、植民地から引揚げて来た人々の生活再建に対して、今日の吉田内閣は、どんな責任ある処置も行うことが出来ずにいます。
政府によって言明された大量馘首政策が比較的ゆるやかなテンポで行われているのも勤労階級の組織力によっておされているからです。最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員
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