は、それ故すべての積極的な、忍耐づよい、天分あるプロレタリア作家の生涯に対して云い得るように、全く階級の力の多岐多難な発展の過程とともに語られて初めて本質に迫り得るものであると思う。歴史の新たな担いてとして立ち現れた階級が持っている必然的な質のちがいが、ブルジョア婦人作家と窪川稲子との間に在ることは自明なのである。
私たちは、様々の苦しい目にも会いながら生涯ともに仕事をしてゆくであろうが、私としては、自分が様々の形で階級的に経験をふかめられて行くにつれて一層窪川稲子の価値が全面的に分って来て、愈々わかち難く結ばれてゆくことを深いよろこびとしている。こういうひととめぐり合えたことをも、根本に溯ってみれば階級のもつ積極的な人間関係の可能性の現れであると思い、私は単なる友情のよろこびより以上のものを感じている。[#地付き]〔一九三五年三月〕
底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
1980(昭和55)年12月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第八巻」河出書房
1952(昭和27)年10月発行
初出:「文芸
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