公のことと私のこと
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)私事《わたくしごと》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年六月〕
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 この社会に公明正大に生きてゆくためには、公私の別をよくわきまえていかなければならない。このことは、よく昔からくりかえして云われて来ております。そして、誰しも一応はわかって暮しているわけでしょうが、昨今私どもが周囲の生活を見まわしたとき、一応は誰にでもわかっている筈の、その公私の区別が、果してあるべきようにはっきりしているでしょうか。
 毎日の実際について、少し観察してみましょう。

 食糧事情は、お互さまにひどいことになって来ました。七時半ごろという今の時間は、どこの御家庭でも、たのしかるべき朝飯の時刻です。一家揃って元気よく、一日の活動に出発する第一の食事をなさるその時間に、ラジオは耳から、心の糧を送ろうとして、この時間のプログラムは考えられているのでしょう。けれども、けさの食卓は、お互さまにいかがなものでしょうか。

 これまで、一家の食事ということは、どこの家で
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