内のプロレタリアート、農民の階級的活動と自覚と社会主義建設が進むにつれて、文盲は縮小した。
五ヵ年計画は農村に三十万台のトラクターを、工場へ二百二十億キロワット時の電力を増大するとともに、文盲撲滅費二億四千六百三十万留を算出している。そして、千八百万人の文盲を清算しつつある。既に一九二八年には百三十六万五千余人が、完全に文盲をすてた。――都会人口の九三パーセント、農村人口の七九・四パーセントが過去の知的暗黒を追っぱらいつつあるのだ。
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――サア、本を! 新聞を!――
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字さえ読めればソヴェト同盟の勤労者にとって読みたいもの、よまねばならぬというものが山ほどある。
五ヵ年計画が始ってからは、ソヴェト同盟の素晴らしい再建設が行われだした。知りたいことはウンとある。
「十月」以来、ソヴェト同盟の勤労者は八時間労働を原則としてやって来た。ところが、五ヵ年計画が四年で完成される程のテンポで進捗するにつれ、企業内の生産手段は電化その他で高まり、平均労働時間がグッと減った。現在、ソヴェト同盟に千三百六十八万四千人の勤労者が活動している。そのうち、半数はもう七時間労働でやっている。青年労働者は、十八歳以下は六時間。十六歳以下は四時間が目やすだ。
しかも五日週間で五日目に一日ずつ休みが来る。
賃銀は、一九一三年――革命前と比べると、話にならない増大だ。五ヵ年計画によって、賃銀は七一パーセント増す。
五ヵ年計画がすすむにつれて、ソヴェト同盟の勤労者一般に文化建設の余裕が出来て来たことはこれだけでもよく分る。
一例として、出版に関する統計を見よう。
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印刷一折を標準として、
一九二七年 一、七五七、〇〇〇、〇〇〇
一九二八年 二、一五八、〇〇〇、〇〇〇
一九二九年 二、六六一、〇〇〇、〇〇〇
世界で、どこが一番多くいろんな名称の本を出しているか(千単位)
デンマーク 三・三
ポーランド 六・五
イタリー 六・九
アメリカ 一〇・三
フランス 一一・九
イギリス 一三・八
日本 一九・九
ドイツ 三一・一
ソヴェト同盟 三二・六
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ところで一九三〇年にソヴェト同盟では一二九一種の雑誌が発行されている。そして、それはどんな工合に売れているか?
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『アガニョーク』(綜合的な政治、社会、文学雑誌)四〇〇(千)部
『労働婦人』 二〇〇(千)部
『何でも知りたい』 一五〇(千)部
『農業技師』 六〇(千)部
『赤い処女地』(文学雑誌) 二五(千)部
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ソヴェト同盟の新聞となると、これ又大したものだ。
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社会・政治指導紙 六種 一、四八七(千)部
経済紙 八種 一一二(千)部
赤色労働組合紙 一種 七〇(千)部
共同組合紙 一種 二四(千)部
軍事紙 一種 四〇(千)部
労働者大衆新聞 五九種 一、四二六千七五〇
農民 一〇五種 一、五三四千五〇〇
青年少年 四七種 四〇七千二五〇
民族語の新聞 二〇八種 一、〇〇四千七五〇
夕刊 六種 三二〇千〇〇〇
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帝政ロシアでは最もひどくやっつけられていたロシア内の各少数民族と農民が、今日は解放され、こんな多種の新聞をもっているのだ。
ところで、ここに問題がある。ソヴェト同盟の勤労者は、こんなに夥しい本、雑誌、新聞を、どうして読むのか? 一々買うのだろうか? 勿論買いもするが、ソヴェト同盟では図書館がすごい勢で拡大されつつある。
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「赤い隅」と図書館
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どの工場でも、食堂の一隅に「赤い隅」――小図書館の設備のないところはない。農場だって、ホテルのボーイ溜りにだってこれはある。労働者クラブの図書館。農民の家の図書館。夏休み、勤労者が一ヵ月の有給休暇で「休みの家」へ行く時には、その附近に大抵図書館の出張所が出来る。
現にわたしがレーニングラード附近に一夏暮した時のことだ。昔の離宮が今は勤労者のための愉快な公園博物館として開放されている。景色のいい池の辺にある一つの旧宮廷用の小建物が図書館出張所になっていた。労働組合員は、身分証明の手帖で、ごくやすい保証金(五十カペイキ――二ルーブリ)をおさめ、自
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