を書く。或る子は絵でスケッチをやる。そうかと思うと詩がある。工場新聞の切りぬきに、自分の批評をつけたものを書くジャーナリズムむきの子もある。それぞれみんなが、力をこめた自主的制作をまとめて、級の成果とするのだ。
一つのいい知慧があれば、プロレタリアート・農民の建設的社会ではそれを出来るだけ大勢の役に立て、みんながそのいい知慧をわがものとして活用するように! 所謂社会主義競争の本質的な基礎教育が、既に小学校のうちに与えられる訳なのだ。
階級的自治の訓練は、この時代から行われている。各級には、衛生委員、従業委員、社会活動委員等がある。それらの委員から一級一人ずつの代表が出て、学校長、教師代表、労働組合からの代表などと一緒に学校委員会を組織する。
遠足をやるにしても、遠足の実行委員があげられ、行先、時間割、見学予定、旅費その他を研究する。級の討議で決定する。――ソヴェト同盟で教師は、ほんとに指導者なのだ。
このように有効に組織されている小学校へ、全同盟の学齢児童を経費国庫負担で包括しようというのがソヴェト同盟五ヵ年計画文化活動の一大事業だ。
何しろ、帝政時代のロシアの小学校、特に農村の小学校は話の外だった。小学校の教師と云えば月五ルーブリの月給で実際乞食暮をしていた。
革命後、ソヴェトの単一勤労学校は四年制、七年制、九年制とわかれている。が、校舎の不足、教師予算の不足その他で、就学率は、理想通りには決して行かなかった。八歳でチャンと就学した児童は三〇パーセントだった。七〇パーセントはもっとおくれていた。ロシア共和国で四年制の児童六九・五パーセントは九歳で入学している。
五ヵ年計画は三十四億七千六百ルーブリという巨額を、プロレタリア・農民文化の基礎水準向上のために、八歳全国児童就学のために割り出している。
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就学児童はどの位増大するか?
一九二七年 九九四二千人
一九三三年 一七〇〇〇千人
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殆ど倍の千七百万という児童が、ソヴェト同盟では無月謝で、学用品、弁当まで国家の支給で勉強することが出来るのだ!
それには教師が殖えなければならぬ。
現在ソヴェト同盟には二十六万五千人ばかりの教師がいる。更に四十四万人の新しい教員が入用だ。
五ヵ年計画によって全ソヴェト同盟の生産が高まり、一般勤労者の賃銀があがりつつある。小学校教師の月給も同じだ。五ヵ年計画の終りに、農村の小学校教師は八十七ルーブリ、都会の小学校教師は百ルーブリになる。現在(一九三〇年)は平均五十八ルーブリだ。
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教員養成学校生徒の社会層(一九二六年)
労働者 一四・六
農民 五三・九
勤人 二〇・四
教員専門学校生徒の社会層
一九二五年 一九二七年
労働者 一五・五 一二・五
農民 三一・〇 二八・三
勤人 三四・八 三五・七
其他 一八・七 二三・五
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この数字はもう古いが、それでもなおソヴェト同盟の農村で文化はどの位急速に向上しつつあるかが分る。
ひっくるめて、一人ずつ児童頭割の教育予算がどの位殖えるか見よう。
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児童一人宛教育年支出予算
一九二八年 二七・〇(ルーブリ)
一九三三年 五八・三(ルーブリ)
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ところで、小学校における児童の就学率をよくするためには、学齢以前の教育文化設備ぬきには出来ない。
ソヴェト同盟は勤労婦人の重荷を軽くするため、同時に幼い兄姉たちを自由に勉強させるために、工場、集団農場を中心とする幼稚園、托児所、子供の遊び場の設備拡大を、やはり五ヵ年計画で実現しつつある。
費用は三億五千万ルーブリだ。
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幼児のための設備拡大率 収容人員(単位千人)
一九二八年 一九三三年 増大率
幼稚園 一〇七 二一七 一〇二・二パーセント
子供の遊び場 二〇三 五〇五 一四九・三パーセント
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――あらゆる技術をプロレタリア・農民の手に――
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モスクワのクレムリンのわきにモスクワ第一大学がある。そこの建物の破風に「あらゆる学問を勤労者に」という文句が金字で打たれている。
今から十七年前、帝政ロシアの資本家・地主と僧侶の支配下のロシアで、勤労大衆のために中等教育施設がどんなものだったかは次の表を見ても明かだ。
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一九一四年度ロシアの中学校、実務学校、予備学校における学生の出身階級の分布
世襲貴族の子弟 六・三
貴族及高官(
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