コムソモールは生産部門の全線に自分たちを動員して、党外勤労者と集団的結束をかためた。然し勤労者の中には「十月《オクチャーブリ》」以後ソヴェト同盟で生産は生産のために行われているという羨むべき事実を理解しない「棒杭《ぼうぐい》奴」もある。資本主義生産に奴隷として使われた時代の悪夢、工場とは出来るだけわが身を劬《いたわ》って働いて金をとるだけの場所と思っている者も幾分ある。積極的に五ヵ年計画、生産の社会主義的拡大に対して不賛成な反革命的分子もある。彼等は職場で、機械の歯車のかげで熱心な「ウダールニク」の努力を邪魔した。そして、鳥打帽の庇をふてくされた手つきでぐいと引き下げて、地べたへ唾をはいた。
「ヘン! うまいようなこと言ってら! その手はくわないよ。俺あ党員じゃねえんだからね。正直に、手前の背骨を痛くして耕してた百姓から牛までとっちまって、日傭いになり下がらせる社会主義ってのは分らねえんだ」
集団農場《コルホーズ》組織に対しては都会の労働者の間にさえそういう無理解が一部のこされた。当時ソヴェト同盟の遠い隅々で集団農場組織に派遣された技術家とコムソモール、それを支持する貧中農群は富農《
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