の損得から云っても集団化された方が得であることを合点し、仲間の中からの活溌な自発性に刺戟され、おいおい、積極的な集団農場員となってゆく実例は、ほとんどすべての地方の集団農場にも見られた。
工場内でも、それは同じであった。生産の場所でのウダールニクの価値は、はじめ何人かで組織したウダールニクによって行われる組織ある戦術が次第に一般勤労者の階級的自覚をたかめ、自発性を刺戟して、遂には工場全体をウダールニクに加入させてゆくことにこそある。宗派的に少数でかたまりきって、英雄主義に耽ることではない。ベズィメンスキーは「射撃」の中で、この大切な階級的心理の洞察をおとしているのであった。
それ等の点について大衆とラップの内部から批判がおこったとき、ベズィメンスキーは云った。「自分は反心理主義だ。現実には肯定と否定との両極しかない。現代ではそれがはっきりしているし、そうなければならないんだ。」
ベズィメンスキーの、こういう固定した対立の理論の柱は、理論家ベスパーロフのところからもって来られたものであった。ベスパーロフは、文学理論の大家ペレウェルゼフの弟子の一人である。ペレウェルゼフは、一九二九年
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