姿を見ると、ソヴェト同盟の大衆が謂わば階級的に用意している哄笑、嘲笑が火花のようにとび散るのだ。
 成程、人形芝居をやったり、身振狂言をやったり、漫画の或る場合なんかは、こうなっていれば手っ取りばやい。一応直ぐわかる。だが、二応、三応と、実際の客観的事情に照らし合わせて考えて見た場合、こういう風に様式化したまんまの人物を無制限につかって、どの程度のリアリスティックな芸術の感銘を与えることが出来るかという点は、疑問になって来る。
 何故なら、ソヴェト同盟で諷刺的に様式化されたブルジョアジーは、いつでも燕尾服にシルク・ハットで、太い金鎖りをデブ腹の上にたらし、小指にダイアモンドをキラつかして、葉巻をふかしている。
 しかし実際に、どんな場合でも、ブルジョアジーはそんなきまりきった風体しかしていないだろうか? どうして! 彼等は自身の利益を守る必要に応じて、技師にもなれば、教師にもなり、ソヴェト同盟では、現に階級の闘士ボルシェヴィキらしい見せかけをした反革命分子さえ発見しているではないか。
 ソヴェト同盟の舞台の上、絵の上にきまった形でブルジョアジーが登場する。大衆が笑殺する。それで根っきり
前へ 次へ
全121ページ中108ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング