一年二月号を見ても分るし、近々作家同盟から出版されるプロトコールを見てもわかる)
革命文学国際局はこの会議を機会として組織がえを行った。国際革命作家同盟《モルプ》となった。これまでよりは一層緊密な国際的規模で各国のプロレタリア文学活動が出来るようになった。
国際的にこうやって組織の網めをひろげつつ、一方ロシア・プロレタリア作家同盟(ラップ)は、ソヴェト同盟の国内的文学活動をも一歩一歩と押しすすめた。
一九三〇年の末から三一年にかけて、ラップのかかげたスローガンは、
「ウダールニクを描け!」
である。五ヵ年計画とともに、ラップの作家たちは「大衆の中へ」次いで「生産の場所へ」と進出した。
作家団自身、生産の場所へはいりこみ、そこでどんな風に新しいソヴェト同盟の誕生が行われているかを目撃して、芸術作品を創って行っただけではない。工場、集団農場の中へドシドシ実践的な指導方針による文学サークルをこしらえて行った。労農通信員の文学的活動を熱烈に鼓舞した。
一九二九年から、全同盟の生産と文化の戦線で、最も階級的に、積極的に働いているのは誰か? 自主的に労働者、農民のイニシアチーブによって組織されたウダールニクだ。
工場の職場で槌をふるい、社会主義的な生産を高めつつあるソヴェト同盟の勤労大衆が突撃隊なら、その歴史的意味を彼等とともに理解し、画時代的な功績を記録しようとして出かけて行くラップの作家たちも、プロレタリア文学のウダールニクだ。
現実、生産の場所を描いて、そこの動力である階級的建設の闘士男女の突撃隊員を描かないということはあり得ない。「五ヵ年計画の英雄」を描けということは、ソヴェト同盟の社会的現実に即したプロレタリア文学の当然な推進なのだ。
「ラップ」は一九三〇年の春、益々豊富に大衆の中に芽生えて来る文学的萌芽の肥料として、初歩的な文学雑誌『成長』を刊行しはじめた。一九三一年には、文学サークルのために『文学突撃隊』という文学新聞を出しはじめた。プロレタリア文学における新幹部の養成は、技師、熟練工の養成と同様、重大な関心事となっている。
一九三〇年の七月、全同盟共産党第十六回大会の会場で「ラップ」代表キルションが行った報告中には、既に全然新しい層から生れて来た作家=労農通信員、コムソモール出身=が何人か数えあげられた。
ソヴェト同盟の生産とともに高められたプロレタリア文化から生れた新しい作家こそ、ドシドシと出なければならない。新しい世界観、実践、階級的教育で鍛えられ、生粋に社会主義建設時代を代表する作品が送り出されなければならない。
各地方支部ラップが、生産の場所における労農通信員を中心とする文学サークルの活動を過去一年間正しい方針で熱心にやって来た結果、昨今極めて興味深い本がポツ、ポツ出版されるようになって来た。
例えば、或る工場内の文学突撃隊《リト・ウダールニク》が中心となって、自分の工場で社会主義建設はどんなにして行われているか。その生産における一般的関係、その工場だけの独特な条件、それを掌握する革命的ウダールニクの活動とその間に起るさまざまな插話等を、共力して芸術的記録にまとめ上げてゆく仕事だ。これはねうち[#「ねうち」に傍点]がある。こういう文学的共働は、例えば「ラップ」の作家たちが時々やる労働者との合作とは又ちがって深い実践的な階級的基礎をもっている。
彼等は文学活動の必要のためだけに集ったのではない。ある一つの工場が五ヵ年計画を基本とした自身の生産プランを大衆的に受け入れた瞬間から今日まで、そこの仲間は機械によって結ばれ、ベルトの唸りで互に繋がれ、企業内の妨害分子と闘いつつ、高く、高くと、プロレタリアの生産と文化を引きあげて来た連中だ。
ここには世界の全人民解放の日まで生産に文化に夜となく昼となくうち鳴らす階級の鍛冶屋、われら闘う人民の若々しい槌の音が、町から村へ、国から国へと鳴り響いていようというものだ!
附記
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「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」は昨年の一月から書きはじめられ、二回休んだが殆どまる一年続いた。
誰かが、ナカナカつづくね。書いてるうちに五ヵ年計画がすんじまうよ、と云ったが、この冗談は真実を云い当てている。何故なら、五ヵ年計画が進捗するにつれてソヴェト同盟の芸術運動の展開は著しく、去年より今年、今年より来年と、建設の新しい客観的情勢の動きにつれて、プロレタリア文学も育ちのいい赤坊のようにのび太って来る。書くべきことにはきりがない。それこそマルクシズム・レーニズムの旗の下にすすむプロレタリア芸術のつきない創造性というものだ。
然し、わたしは一先ずここで、この記録はうち切りたいと思う。後から後からの愉快なニュースは、別にニュースとして報告しつづけて行こう。(特
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