期」にしろ、「村娘」「農村通信員の手記」「貧農組合」「コサック村」、すべて「ラップ」の若手作家、主としてコムソモール出身の作家によって書かれた。
 農民作家が、厳しく自己批判すべき時が来た。
 ソヴェト農村の社会主義的な集団化は、農民の現実を大きく変化させ、急テンポで農民作家の階級的認識を追い越しつつある。
 五ヵ年計画は、農民作家に重大な任務を授けた。それは、昔の封建的で個人主義的農民気質と生活の型が、あらゆる農村生活の特殊性等が社会主義建設の現実にあっては、より高い階級的|自発性《イニシアチーブ》への可変的要素であることを、複雑な新しいものと古いものの錯綜のうちに芸術化するという課題である。

        ソヴェトの農民は文学をどう噛みこなすか

 ソヴェト同盟内の労働者大衆が、次々に発表される小説、戯曲などに対して、どのような感想批評をもつか。それは比較的はやく、はっきり反映して来る。
 彼等の批評は『文学新聞』への投書となる。『キノと生活』へ工場の労働通信員の寸評となって出て来る。工場内の文学研究会でまとめられた批判は「ラップ」の初歩的機関紙『成長《ロスト》』などへも載せられる。芝居のプログラムのうしろには、その時上演されている戯曲についての大衆的反響が印刷されているほどである。
 ところが、農村に於ける農民大衆=一生モスクワというところを自分の目で見る機会がないような辺鄙なロシアの田舎で「十月」を経験し、国内戦を闘い、そして今は五ヵ年計画による集団農場建設のために努力しているソヴェトの農民大衆の芸術に対する反響は、どの程度に集められて参考にされているかというと、これには余り積極的な返事は与えられなかった。
 一九一七年以来、ソヴェト同盟の農村は、どんな山奥でも農村通信員というものを持っている。主として年長のピオニェールや、コムソモール、または党外の活動的な分子によって組織される農村通信員は、特におくれた文化の農村生活の中で実に多くの文化的役割を果しつつある。ソヴェト労農通信員の強みは、日常の政治・文化戦線における彼等の建設的実践力だ。単に書くより先に[#「書くより先に」に傍点]、行う[#「行う」に傍点]ところに彼等の異常な文化建設力がある。
 五ヵ年計画がはじまってからの彼等の活動は目覚ましいものがある。一九二九年の秋から三〇年の種蒔時にかけて敢行され
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