ルスタムは知っていた。彼は、サアンガンにわざわざ使者をやり、子供の誕生の有無を確めさせた。サアンガンの王女は自ら、母とならなかったことをその使に托して告げて来た事実があった。それだのに、猶このようなはかない妄想を抱くというのは。
「さて――自分はそれほど寥しがっているのか」
という、言葉にならない歎息がルスタムの胸に起ったのであった。

        二十五

 彼は、純白の纏布を巻きつけた頭を軽く左右に振った。そして、気をとりなおし、ギーウに新な酒を勧めた。
「――卿の立てなくなるまで果物酒を振舞おう。その代り今度のことは」
「いやそれはならぬ」ギーウは差した盃をわざと引っこめて云った。
「それでは心を許して好物も味わえぬ。狡い老人だな、王の命令まで盛潰そうとする」
 二人は愉快そうに声を揃えて笑った。がルスタムは直ぐ、真顔にかえった。
「卿を使者に遣わされた王の思惑はほぼ推察がつくが――全く、今度のことは卿の働きにまかせよう。年寄が出るがものはない」
 ルスタムは、四辺が暗くなると広間に幾つも大|篝火《かがりび》を燃させた。揺れる赤い光で、広間じゅうが照った。
 再び、黒人の芸人
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