タムは、不承知の感情をありありと顔に表した。ギーウは、それを見てとり、気軽そうに云った。
「何一寸卿の有名な白馬ラクーシュと卿の旗を見せさえすれば好いのだ。そんな青二才なぞは、穢わしいジャッカルのように尾を巻いて退散するだろう」話の中に繰返される主将が若者であるという点が、何となくルスタムの心を牽いた。彼は漠然とした好奇心で尋いた。
「一体その若者というのは何者だ? 幾つ位か、フィズルが話したか?」
「話した。何でも二十になったかならない位に見えたそうだ。ツラン風に帯でしめつけた衣服をつけているのに、頭には磨いた、まるでイラン風の兜を戴いていたそうだ。それで見ると、イラン国境に近い属領のものと思えるな」「ふふうむ――」ルスタムは、何か遠い記憶を思い出して辿るような眼つきをした。彼は、それらの言葉が心の中に入って、じっと眠っていた何ものかを掻き立てるような感じに打たれたのであった。自分が、昔、昔、未だ壮《さか》りの年であった頃、盗まれたラクーシュを追ってツラン境のサアンガンに行ったことがあった。彼処の男等は、そういう半々な風をしていたのではなかろうか――まざまざと二昔前の情事の印象が蘇え
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