に、幻と思えないまざまざと浮んだ父の姿は、一層はっきり彼の心にやきつき、守本尊となった。この広場の大ごたごたの上にも巨人のような父の姿が、透明な積雲のように、而も溢れる精神に漲って、凝っと自分の計画に注目しているように思うのであった。
六月の下旬、スーラーブは、予定通りイランに向って出発した。彼の、厚い鉄の胸当の下には圧搾され、やっと縮んでいる限りない希望と、母から借りて来た、あの銀台に土耳古玉をつけた頸飾りが大切に蔵われていた。ターミナはこの菱形の碧い珠に、幾夜かの涙と祈りとをこめて別れを告げるスーラーブの頸にかけた。彼女は、今度の計画が成功すれば、必ずルスタムとスーラーブの名に於て、迎えを寄来す。使が、再びその頸飾を白檀のはこに入れて持って来れば、信じてその者に案内を任せるようにと云う、スーラーブの言葉を唯一の希望に老いたシャラフシャーと、人気のない城を守ることになったのである。
スーラーブの軍は、十日目の日沈頃アフラシャブ領とサアンガン領との境を区切る険阻な巖山の麓で、バーマンに率いられ、一日前に先着していたツラン勢と落ち合った。
二十一
六七月は、ツラ
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