の本性というものからは遠い、無縁なものであることが明らかになったような形さえある。
考えれば、祖父は勿論、母も、彼等自身の満足の方便として、自分を自由にした。ちっとも、自分の希いは思ってくれなかった。最も近いそれらのひとびとから、政治的に何ぞというと掣肘《せいちゅう》を加えずに置かない冷血な、蒼白いアフラシャブに至る迄、今のスーラーブには一人として、心の通じ合う、誠を以て尽し合う者はなく感じられた。
ただ、ルスタム、父。その繞りだけは生命がある。真心と自分を牽く光明とがある。けれども、何か異常なことが起り、周囲の絆を断ち切って、真直自分がイランに飛んで行けない限り、その退屈な、石塊のような、生活を続けなければならないのだ。
スーラーブは、太い、激しい息をつき、今、ここから、そのまま双手を翼に変えて、翔び立ってしまいたく思った。時が来る迄に、無意味な日々が、いつとはなく自分の筋骨を鈍らせ、衰えさせてしまいはしまいかと考えると、ぞっとする懼れが心を噛んだ。
万一、機会が来る迄に、もう老年に達したに違いない、父が死ぬことがありはしまいかと思うと、スーラーブは、無言に、辷り、移ろう日か
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