東雲頃迄空は平穏で、消えのこった淡白い星に涼しい風が渡った。ところが、太陽が登るにつれ、黒雲がツランの陣の後方から湧き上り、雷鳴を伴った珍しい朝の驟雨がかかって来た。
ポツリ、ポツリ、ルスタムは天幕を打つ雨の音をきいた。間もなく幅広い、天地を押しつつむようなサッサッ、サッサッという雨脚が迫って来ると思うと四辺は濛々煙るイランの俄雨につつまれた。雷の音、激しく天幕から雨滴のしたたる音。天幕内の地面に、砂が押流され幾条も小溝が掘れた。やがて、雨が遠のいた。天幕を打つ音が軽く、軽く、だんだん小さくなって来た。同時にがやがや外に人声が!
「あ、虹! 虹!」
と呼ぶのが耳に入った。ルスタムは、天幕を出た。そして、多勢の兵等が眺めている方角に眼を遣ると、彼は思わず、
「ほほう!」と感歎の声を放った。
四十八
虹は、ちょうどイラン軍の真後の地平線に、壮麗な光輪のようにかかっていた。七色の縞が鮮かに見え、ルスタムの処から眺めると、数多いイランの幕営が、優しく小さく群てその晴やかな光の冠に抱き込まれているように思えた。彼方の地平線は、まるで別なところのように宏大に見える。遠い曠原
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