き火が滅し、白檀の香がつめたく遠く消えてしまっても、ルスタムは、彼の頭を擡げなかった。彼は、暫く身も心も祈に捧げて、苦しい、当のない想像や矛盾した実際の間に何かの解答を得ようとしたのであった。神は、すぐ間近にあるように感じられた。心の声は真直、白檀の烟とともにその膝に達したと思える。然し、ルスタムは、どんな特殊な囁きも、羽搏きも自分の傍に聞かなかった。夜は、そして幕舎の裡は、もとどおりイラン曠原の寂しさと、見なれた光景に満ちている。それでも、彼の気分は祈りによって幾分鎮められた。卓に置き捨てられた酒瓶に映る燈の色や、ぽーっと大きなものの影が、少しは彼の眼に美しさの感を与え、愛を感じさせた。やや暫くそのまま坐ってい、ルスタムは立上った。そして、皮袋を元の櫃にしまい、燃火の灰をならし、一まわり天幕内を見まわすと、入口の垂幕をあげた。
 ギーウを迎えに、気を更えるため自分で行こうとしたのであった。天幕を出、ほんの僅か歩いたかと思うと、ルスタムは、誰かに寛衣の裾をひかれた。月光の遮られた陰翳から黒く立現れたのはギーウであった。彼はルスタムを案じ、余程前からそこに忍んで気勢を窺っていたのだ。ルス
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