ってゆさりともしない大きな顔には、深い幾条かの皺が走り、何ともいえず寂しい、あじけない感じを起させる。スーラーブは、腰の短剣に手をかけたが、覚えず柄をつかんだまま逡巡した。老戦士の顔には、何かまるで人間離れのした感動があった。それがスーラーブを陰鬱にした。こんなにしてその体の上に踏跨っているのなどはさっさとやめ、手の塵を払って立ち上ってしまいたい、いやな浅間しい気を起されたのであった。彼は、その好機を利用して対手の面覆いを剥ぐことさえ忘れた。彼は、短剣にかけた手をそのまま、深く対手の上にこごみかかった。そして、ひとりでに囁きで訊いた。
「――真実卿はルスタムではないのだろうな」
四十三
老戦士の面には云いようのない苦しげな色が漲った。彼は、歯の間から呻いた。
「殺せ。殺せ。卿は勝ったのではないか」
云うなり一粒大きな涙が古木の表皮のように皺んだ彼の目尻から溢れ出した。そして、糸のように流れて傍の地面にしみ込んだ。スーラーブは、天日の運行も、自分の頭上で止まってしまったように感じた。殺すに忍びない何かが切な彼の胸にあるのだ。彼は緊張に堪えず、覚えず身じろぎをした。
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