て知る世界のすべての人にとって、それが存在し得ていることを不審に思わせていたいくつかの民主的と見えない法規への廃止と独占資本の害悪に反対する主張が示されている。
 ウォーレスは、保守勢力がその意外におどろいたほど広範な層の同感を集めた。在米の日本人二世の間にも進歩党支部がつくられはじめた。その看板をかかげず、投票権はもたないけれど平和と民主を愛する世界各国の人々の心の一隅に進歩党の支部はその場所を発見したのだった。民主党のトルーマンにも共和党のデューイにも進歩党の政策がないということが共通した政策である、と批判されていたとき、ウォーレスの進歩党はアメリカの人々に、論議に価する綱領を示した。
 ウォーレスの選挙演説に加えられた妨害はひどくて、トルーマンが大統領として、妨害禁止のための声明を発しなければならなかった。妨害を行った二人の被告が、検事から「罰として労役に服すか、ヴォルテールの言葉を一人は五百遍、一人は三百遍書きうつすか」ときかれて、ヴォルテールの言葉を写す方を選んだエピソードも生れた。彼等が幾百ぺんかかきうつしたヴォルテールの言葉というのは次の文句であった。「わたしは君の意見に
前へ 次へ
全20ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング