現代の心をこめて
――羽仁五郎氏著『ミケルアンジェロ』――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三九年六月〕
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羽仁五郎氏は、この真心を傾けて執筆された独特な伝記を、有名なダヴィテの像に今日見ることの出来るミケルアンジェロの不滅の生命から語りはじめていられる。「ミケルアンジェロは、いま、生きている。うたがうひとは『ダヴィテ』を見よ。」という情熱のこもった声によって、この魅力ふかく学ぶところの多い一冊の本は始まっているのである。
この評伝の美しさ、漲る誠意と、その土台をなして実に活々と確かに歴史の現実の諸関係をつかみ出している科学者としての方法は、ミケルアンジェロの芸術の本質をはっきりと描き出しているのみならず、当時の複雑きわまる社会と芸術との活きた画が立体的に動的にくりひろげられてゆくその道すじに、人々の心におどろくような新鮮な実感をもって、今日の世の中や芸術のありように対する新たな目ざめを覚えさせて行く。
ミケルアンジェロという巨人的な天才の生涯と芸術とは、決して運命の気ま
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