った。二人の親も世間に見せるかおがないと云って家の中に許り入って居たけれ共とうとう悔死、さぞ口惜しい事だったろうと人々は云って居た。其の後は家に一人のこって居たけれ共夫となるべき人もないので五十余歳まで身代のあらいざらいつかってしまったのでしょうことなしに親の時からつかわれて居た下男を夫にしてその土地を出て田舎に引き込んでその日暮しに男が犬をつって居ると自分は髪の油なんかうって居たけれどもこんなに落ぶれたわけをきいて買う人がないので暮しかね朝の露さえのどを通す事が出来ないでもう今は死ぬ許りになってしまった。花の様な美しかった形はもうどこかに行ってしまった様になって野原の岩によりかかってミイラの様になって死んでしまった。一体女と云うものは一生たよるべき男は一人ほかないはずだのに其の自分の身持がわるいので出されて又、後夫を求める様になっては女も終である。人と云う人の娘は第一考えなければならない事である。一度縁を結んで再び里にかえるのは女の不幸としてこの上ない不幸である。若し夫は縁がなくて死んだあとには尼になるのがほんとうだのに「今時いくら世の中が自分勝手だと云ってもほんとうにさもしい事です
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