も出て長持のはげたのを昔の新らしい時のようにぬりなおして木薬屋にやると男にこれと云うきずもなく身上も云い分がないんでやたらに出る事も出来ないので化病を起して癲癇を出して目をむき出し口から沫をふき手足をふるわせたんでこれを見てはあんまりいい気持もしないんで家にかえすとよろこんで親には先の男にはそりゃあ、いやな病気があるんですよといいかげんなさたに、この報はきっとあるだろう。もうまもなく振袖も見っともなくなったのでわきをふさいでからも二三度縁組みして十四の時から嫁に行き初めて二十五まで十八所出て来たり出されたりしたんで段々人が「女にもあんなあばずれ者があるもんですかネー」
と云いひろめられたので後では望み手もなくて年を経てしまった。嫁入のさきざきで子供を四人も生んだけれ共みんな女なんで出る段につれて来てその子達も親のやっかいになって育て居たけれどもたえまなくわずらうので薬代で世を渡るいしゃでさえもあいそをつかして見に来ないのでとうとう死ぬにまかせる外はない。弟の亀丸も女房をもらってもよい時だけれ共姉がそんな女なので云い込む人もなくて立って居た所が亀丸はとうとう病気になって二十三で死んでしま
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