な、一寸得意気な名などをつけられるような顔はして居ない。マークはよい。少し田舎めくが素朴な故意《わざ》とらしくないところが。
新来のマークは、仔犬に共通のやかましいクンクン泣きを、兎に角昼間は余りしなかった。母犬には前から離れて居たのだろう。
私共は、彼の為に(雄犬であった。)みかん箱の寝所を拵え、フランネルのくすんだ水色で背被いも作ってやった。
彼は、今玄関の隅で眠り、時々太い滑稽な鼾を立てて居る。
女中が犬ぎらいなので少し私共は気がねだ。又、子のない夫婦らしい偏愛を示すかと、自ら面栄ゆい感もある。
今夜、どうか、ひどく泣かないでくれるとよいと皆が希って居る。
底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
初出:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2008年12月1日作成
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