っている御飯の茶碗をはたき落されるような馘首がおこる原因も減ることは明白である。
失業の不安で波だつ空気の中に響いている声は、都民税二・七倍増し(失業者の家族でも都民であることに変りはありません)。外米の輸入(これで金さえ出せば、主食はいくらでも買えるということになります)。滞貨放出(金のある人にとっては衣料の面も楽になるでしょう)。ガスの制限もゆるやかになりました(ただし料金は今までの倍)。そして冬は石炭も手に入るであろう(一トン三千円から五千円の金があるならば――)。
ここに、わたしたちを堪えがたくする現実の矛盾がある。理性のある社会の生活であると思うことのできないあからさまな不合理が強いられている。
社会の新しい歴史は人民によってのみ推しすすめられる。この必然は、この現実のなかに生れてきているのである。
国鉄整理にからんでおこった下山国鉄総裁の死は、最大限に政府の便宜のために利用された。共産党に関係のある兇悪な犯罪事件のように挑発され、一部の知識人さえその暗示にまきこまれた。ところが他殺でないことがわかったきょうでも、まだ死者に対するはっきりした哀悼は示されていない。
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