のに対して一つの新しい態度をきめる時期に来ていると思う。社会事情の推移につれて生れ消える現象をおっかけて批判したり要望してはおっつかない段階にたっている。わたしたち日本の実直な市民として、一生の大部分を家事についやす主婦として、日常の生活に、教育に、読書や娯楽に、どういう文化を求めているかということを、はっきり自分で知らなければならないと思う。そして、求めている文化は、どういう社会生活の上に可能であるかという点についても具体的につかんでゆかなければならないと思う。
きょうの文化上の欲求の一つとして、現代の日本の経済事情と、その経済事情にどう処してゆくかという政治の方法に無関係なものがあるだろうか。主婦が、わずかのひまを見つけて読みたい本は、一般の物価上りで三冊が一冊にされつつある。その一冊にさらに五パーセントの取引税がかかる。子供たちに買ってやる絵本にもその五パーセントはついて来る。国会でも問題になったこのたちのわるい大衆課税は、政府としてやむをえないこととして押しきった。理由は天文学的数字の予算をまかなえないからであり、そのなかで小さくない部分を占めている終戦処理費というものを出さ
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