でいる。そして行政整理に生活不安を感じる人々である。鈴木文史朗の「何千万を殺す[#「何千万を殺す」に傍点]」という「理想的なやりかた[#「理想的なやりかた」に傍点]」論はこれら数十万人の人々の心に、鬼畜の言という感銘を与えた。殺す[#「殺す」に傍点]という言葉には、殺されるもの[#「殺されるもの」に傍点]に対して、殺すという立場において、自己の生存保持の意識が潜在している。鈴木文史朗はついこの間アメリカへ行ってリーダーズ・ダイジェスト本社の立派なことを日本に吹聴したが、彼はアメリカで何を学び、どう語ることを学んで帰ったというのだろう。戦時中彼はヨーロッパ漫遊をしてナチスと兄弟となっていた日本権力の活躍ぶりを視察して、本も著している。鈴木文史朗の暴言に答えて「そんなことはできない」と答えたときのパロット氏の表情が見たかった。鈴木文史朗という新聞記者だったものがアメリカまで行ったあげくなおこういうものいいをするぐらいなのだから、日本人の残虐性は根づよいと思わずにいられまい。広島の平和都市、長崎の国際都市建設案を、議会満場一致で賛成、感謝したところで、民間人の代表めかしてものをいう人の本心が
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