化面における新日本主義は、或る種の政治的傾向が非科学性と結びつき従来極めて素朴な形であらわれていた。常識はそれに対して比較的容易に疑問を感じ且つそれを表白して来た。今回の顔ぶれはアカデミックな部分において、これまでの弱点が補強されている。しかも、長谷川如是閑氏が参加していることや、会則も綱領もないということなどは、何か質的に変化がもたらされたような誤解を一般に与え得、たしかに文芸懇話会よりは、時代的色調において一進しているのである。
日本がその現実の歴史に即して周密に探求されることを望むことでは、私も決して人後におちない誠意をもつものの一人である。林房雄氏は談として「会則も綱領もない」ことで会の本質の自由を強調し、文芸懇話会の延長と見られては困る、何物の援助も受けない独自的存在であり、自然にこの会の成立が各人に要求されて出来たものであると語っている。
が現在この会に会則、綱領のないことが、直ちに性質の自由を意味すると解釈しなければならないとしたら、誰しも当惑するのではないだろうか。何故ならこの度結成された「新日本文化の会」の構成要素は、アカデミックな面において強味を加えて来ていると
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