があった。文芸懇話会の本質的な弱点、矛盾錯誤は主としてそういうところに露出したのであった。
 帝国芸術院に対する一般の気受けについては、現在各人の胸に活きているものであるから姑《しばら》くいわず、ただ、芸術院賞というようなものを制定したら、収拾し得ない紛糾をまき起す内部の事情であろうということは誰しも推察するにかたくないのである。
 芸術院会員にはなれず、しかも事大的に鬱勃たる一団の壮年者によって「新日本文化の会」というのは結成されるのであろう。十七日に第一回会合を持たれる由であるから顔ぶれはまだ分らない。林房雄、中河与一氏などが音頭とりで、名称も懇話会よりは一層鮮明に、一傾向を宣言したものである。日に日に新たなる日本であるから、新日本主義も響きとして生新なようでもあるが、日本文学を新たな角度から把握しようとするその態度・方向においては、その非科学的・非歴史的ロマンチシズムに対して、すでに夥しい疑問が一般常識の裡から発せられているのである。
 懇話会結成当時も、その資金の出所は誰にもはっきり分らなかった。「新日本文化の会」「文化中央連盟」いずれも、どこからどうして出る金でまかなってゆく
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