近頃の感想
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)毀誉褒貶《きよほうへん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)つむじ風[#「つむじ風」に傍点]に捲きこまれ、
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 考えて見ると、私は今日まで作家として相当長い仕事の間に、自分の作品または生活について書かれるいろいろな批評などに対して、文章をもって答えたことは、ごく稀であった。
 自分としてその批評に賛成であった場合も不賛成であった場合も、多く黙っていた。
 それには、後でのべようと思う一二の理由があったのであるが、この頃、私は従来までの自分のそういう態度についていささか考え直すようになって来た。
 その間接の原因となるものは、一昨年の末から去年にかけてプロレタリア作家の間を荒した批評嫌悪症のさまざまの要因が、今はプロレタリア文学運動の歴史の鏡に照らされて相当はっきり私にも見えて来たことと、そこから汲みとったいろいろの教訓をもって今日自分のまわりを見まわすと、おのずから自分の態度についても考えが新にされる点があるからである。
「批評などというものは、作家を大して育てる役
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