らきられてそのしとやかななで肩の上に、ぞっくりそろった末をゆるがして居る、そのつや、その香りはもと通り紫とかがやき紫の香りを立てて居るのがしおらしかった。
 経は紅の口からまだほとばしって出る、まるでわきに人の居ないように……殿はその姿を絵像を見るような人間ばなれをした気持で見て居た。経の切れ目になった時、紅はつと坐を下って手を支えた。
「昨日はまことに……妙なものを御目にかけまして相すみませんでした、どうぞ御ゆるし下さいまして。御覧の通りになりますのに人にかくした、ことに殿様のようにいろいろ御恩になって居ります御方にかくした事が有ってはと存じましたので……」
 ひくいけれども落ついた立派な態度と声でいった。乳母も髪をおろしてしまった。母君もおろしてしまいたいと云って居られる。こんな事を思った殿は、冷い風の吹いて来るような心持で、
「私は、御前のたれよりもまことの心をもって居て呉れたのを有難く思う、今まで有った事、私はその事についてしたお前の行がいかにも立派であったと思う。私は死んだ人にかわって御前のつくして呉れる心地を感謝するのだから――」
 紅はだまってきいて居た。
「有難うござい
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