共同耕作
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)洒落《しゃれ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)奴等|辷《すべ》って
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)裏のくぬぎ[#「くぬぎ」に傍点]林の
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裏のくぬぎ[#「くぬぎ」に傍点]林のあっちをゴーゴーと二番の上りが通った。
とめ[#「とめ」に傍点]はいそいで自分のたべた飯茶碗を流しの小桶の中へつけると、野良着へ手拭をしっかりかぶって、土間から自転車をひき出した。
「もう行くか」
「ああ」
炉ぶちのむしろ[#「むしろ」に傍点]から、年はそうよってないのに腰のかがんだ親父の市次が立って来て、心配そうに云った。
「――めったと皆の衆の前さ、目え立つようなところさツン出るでねえゾ、ええか!」
市次は組合へ入ってる癖に引こみ思案で、小作争議の応援になんぞにはどうしても出たがらない。俺ア年だで、皆の衆やってくんろと尻ごみするのだ。マンノーをくくりつけた自転車を往還まで押し出すと、とめ[#「とめ」に傍点]はペダルへ片足かけヒラリと身軽くとびのった。
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