て堪えられないような目にあわす話をききますが、みんなそれは嘘でない証拠がここにあると思いました。
監獄では何ぞというと懲罰をくわすのだそうです。革命記念日に嚔《くしゃみ》をしたと云って懲罰をくったと杉浦啓一が云ったら、みんなドッと笑い傍聴人まで笑いましたが、法官帽の連中はどんよりした顔で別に笑いもしません。大体気力のない様子です。
杉浦啓一が、革命の完成の日を見ないで敵の手に倒れた二十七名の同志に、謹で敬意を表すと云ったとき、私は何だか体が寒いようになりました。
次に、又宮城裁判長が眠たげな声で何かいうと、今度は絣の着物を着た若い男の人が小さい机を前にして立ち上りました。それは高岡只一という人です。裁判長が、高岡只一がモスコウの共産大学にいた間に何をしていたかと一言云ったらモスコーの学生生活の一番の特長は、それがいつでも大衆の活々した日常生活と結びついているところにあると云うはじまりで、細かくソヴェト同盟の失業と搾取のない労働者の生活、政治上の権利、ソヴェト同盟の工場学校、労働者クラブ、社会保険のことなどを演説しました。
この高岡という闘士は十一歳の時から硝子工場でちゃんとした
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