か。男と女とがうちまじって一つ船にのって働いて、もし時化《しけ》で漂流でもした場合におこって来る複雑な問題も考えて、さけられているというわけなのだろうか。
 女は自分では海へ出て働かない。このことから経済も受け身で、働く男のいなくなったときの海辺の女の暮しというものが一層思いやられるところもあるのである。
 十一月号の『漁村』には、各県の漁業の合理化の方策がのせられていて、婦人に関する項目として、陸上の仕事はなるたけ婦人にさせること、日常生活の合理化を教え、衛生、育児の知識を授けること、女子漁民道場をこしらえて漁村婦女の先駆者たらしめることなどの案が示されている。そのどれもが大切なことだと思われた。
 この頃でも浜の日向で網つくろいをしているのは、お爺さんたち男ばかりなのだろうか。ああいうことは女に出来る仕事と、はた目には見られる。たとえば、カニ網|梳《す》きという内職は、漁村からはなれた土地の女たちの稼ぎとなっているけれども、浜の漁師のおかみさんたちがそれをしているのは少くとも見たことがない。鰯の加工の仕事などは女が働いているが、そういう加工の仕事のないところの漁家の婦人は、魚売りの
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