本は海の国というけれども、日本の普通の漁村の生活は、漁業の方法でも昔ながらで、どんどん小さい経営主は倒れて行っているのが現状であるそうだ。そして賃銀でやとわれて働く境遇にかわって行っている。
あらゆる面で統制化されてゆくこの頃の事情は、それらの根本的な問題にどんな光明を投げるだろうか。漁村の婦人の生活の向上ということも、それだけを切りはなして語ることは出来ないのだと思う。
漁村の小学校での教育法というようなことについても考えられる。海女の働いている地方では、母さんや姉さんについて、いつとはなし小さい女の子も海の働きになれてゆくのだけれど、そうでない海岸の小学校に通っている位の女の子たちは、大人の女の働くとき交って手伝うだけで、これまでは格別な新しい工夫を盛った生活的な教えかたを学校でうけてもいなかったと思う。そんな点も、何かそれぞれの土地に応じての生産的な活動に注意をむけた工夫が、女の子たちのために考えられてゆく余地もあるだろうと思える。[#地付き]〔一九四一年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
初出:「漁村」
1941(昭和16)年1月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
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