日の夕方家で父さんや母さんと御飯をたべてる最中、思い出してそのことを話し、リーダ・ボルトニコ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]に云ったよりもっと威勢よく、
――僕、ね、そいでね、飛ぶんだよ! ね、母さん。飛ぶの! こんなに、ホーラ!
握ったスープ匙を頭の上でふりまわして、叱られた。叱りながら、父さんも、母さんも、ミーチャがそういう人間になれることを疑わないようだった。
――見な! これが本当のプロレタリアート文化の進歩ってもんだ。俺は職工だ。工場でアルミニュームの板をこねまわしているが、自分で飛行機を組立てようとは思ったこともねえ。ところがどうだ! チビ奴! 俺をもう追い越している。飛行機を造る力を自分の中に感じてやがる。
父さんは、無骨な手でミーチャの頭を撫で、
――ふんばって、せっせと親爺を追いぬけよ。いいか! そして、俺ら世界のプロレタリアート、ソヴェトの文化を、持ち上げるんだ。アメリカを追いぬくのは俺たちじゃない。こういうチビ共だ!
と云った。父さんの声に深い感動がこもっていて、ミーチャは重い掌の下で嬉しいような、おっかないような気になった。
――さ、いいか
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