ロージャの顔! フフフフ。……だが、ミーチャは急に心配になって来た。いそいで、手拭を壁の釘にかけて、食堂にもう坐って熱い茶を飲んでる父さんと母さんのところへ馳けつけた。
 ――ねえ! 母さん。あの二十日鼠まだ生きてるだろうか?
 ――どの二十日鼠さ。
 ――ホラ、あの! 僕話したじゃないか、ワロージャからナターリヤ・イワーノヴナがとりあげて、あとで籠へ入れて、僕たち皆で飼うように呉れたやつさ! 生きてる?
 ――どうだろうね、私も知らないよ。
 ミーチャは、この三月からもう工場の中の托児所へは行かなかった。父さんと母さんがこの新しい労働者住宅へ越して来て階下に建物附属の幼稚園があった。そこで毎日、昼間は暮してるのだ。
 ソヴェト・ロシアでは、子供を大切にしている。丈夫に、賢い、よい労働者として育つように国家がいつも出来るだけの金を出して、注意している。だから、ミーチャが先行ってたような托児所、または幼稚園、遊び場は一つの市にいくつもある。それをモットモットふやして、もっと大勢の子供を愉快に暮させようと親たち――プロレタリアートの親たちは骨折ってるのだ。
 一九二八年托児所の寝台は三万四
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