拡がる視野
――今日の婦人作家――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)繋《つなが》り
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四一年五月〕
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最近の二年ほどの間に、婦人作家の活動はかなり活溌にあらわれた。
それにはいろいろ複雑な理由があると思うけれども、第一には、過去十年ほどの間多くの困難を経験しながらそれでも文学はすてずに努力して来ていた婦人作家たちが、文学の技術や生活経験においてその人々なりにある程度に達して来ていたとき、現代文学がめぐりあうようになった深く大きい動揺につれて、婦人作家の存在が一般の活動の裡へ登場して来たことがいわれるだろう。
外部の条件として、インフレ出版と呼ばれるような出版の活況があって、一面ではその乱暴な出版洪水のために、文学は荒らされているのも現実である。婦人作家の文学業績も無責任に商品化されてゆく危険があるのだが、めいめいの心がけによっては、こういう時期をも将来の自分たちの成長のための何かの条件として本当の意味で積極的にいかして行けないものでもないと思う。
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